価格のお手軽さと使い勝手の良さで、「fukuroyasan.jp」尾崎紙工所でも小さいものはお猪口ホルダーや巾着袋から、大きなものは手提げ袋、ショルダーバッグなどに広く用いられている不織布。
紙袋用の紙・ポリ袋用のポリエステルと並ぶ尾崎紙工所の生地素材三本柱の一つです。記念すべき第一回のコラムは、その不織布への印刷方法について書いてみました。
その前にまず不織布についてのおさらいから。不織布というのは文字通り「織っていない布」の意味で、尾崎紙工所がバッグ類に使用しているポリプロピレン製の不織布以外にも、例えば古くから使われているフエルト素材も不織布ですし、新しいものでは最近よく使われるようになったタイベックなども不織布の一種。いわゆる「織る」という工程を経ないため、工業的に安く大量生産できる上、一方向に裂けやすいとか伸びやすいといったこともありません。厚みなどを自由に調節できるのも利点の一つです。
織った布と比べると、少々強度は落ちてしまいますが、安価で使い勝手の良いバッグや袋の素材として、不織布は世界中で使用されています。
さて本題に戻って、尾崎紙工所で使用する不織布製品への印刷は、大きく三種類に分かれます。シルクスクリーン印刷と転写印刷、そしてPP(ポリプロピレン)シートにグラビア印刷したものの不織布への貼り付けがその三種類です。
ここではその三種類の印刷のそれぞれの印刷方法や、利点や欠点などの特徴を説明していこうと思います。このページに興味を持って下さった皆さま、しばらくお付き合いいただきますよう、よろしくお願い致します。
シルクスクリーン印刷とは
薄い布を張ったアルミ型や木型にインクを通す場所、通さない場所を作って不織布の上に載せ、その上からインクを塗ることで不織布に印刷するという方法がシルクスクリーン印刷。
元々はその名の通り、絹の布を使って印刷していたそうですが、今は絹より耐久性の高い素材生地を使うことで、前回の製作から一年後にもう一度同じ物を製作したいと言うような際にも、印刷に再利用できるような版になっています。
数量によらず印刷が可能で、すでに出来上がったバッグにロゴ入れをすることもできますので、尾崎紙工所でも既製品不織布製品への印刷には、ほぼこの方式が使われています。
ただ、印刷する価格も比較的安価で小回りもきくことから、良い点ばかりに思われるかもしれませんが、シルクスクリーン印刷にもいくつかの弱点はあります。
例えば、上記のような印刷方法のため、あまり細かい線(0.5mm以下の細さの線や1mm以下のヌキ線)は途切れたり潰れてしまったりする可能性がありますし、オフセット印刷と違ってCMYKの四色での掛け合わせで色を作ることはできませんので、PantoneやDICなどの特色を使った一版一色の印刷になります。濃淡をグラデーションで表現することも同様に不可能ですので、漫画のようにドットの大きさや密度で濃淡を表現する必要があります。
また、それぞれの色を一色ずつ一つの版を使って手作業でプリントするので、いくつもの色を使う場合には版ズレの可能性が出てくるため、色の数を多くしたい場合には、版がズレても問題のないデザインにする必要があります。
色数が増えると版代や印刷代も高くなってしまいますので、一色や二色でくっきりとした文字やロゴマーク、模様などを印刷したりする事が得意な印刷方法といえます。
転写印刷とは
単色向けのシルクスクリーン印刷と違って、カラー写真や色数の多いロゴ、グラデーションを使ったデザインを印刷する時には、熱転写や昇華転写と言われる転写印刷を利用します。
家庭用のインクジェットプリンターで専用のシートにデザインを印刷し、アイロンで服などに転写するアイロンプリントは、多くのご家庭で楽しんだ経験があるのではないでしょうか?そんなアイロンプリントの高級・工業的な方法が転写印刷だと思っていただければ間違いないかと思います。
特徴としては、先にも書きましたように写真やグラデーションなどの色調・階調を正確に表現するのが得意なのが転写印刷といえます。
ただ、一旦転写用のシートにデザインをプリントし、それを更に不織布などに転写するという印刷方法ですので、バッグや袋の数量+αの枚数シートへのプリントが必要となりますし、また印刷面積が広くなれば、その分シートを多く使うことになってしまいますので、同じ版を使いまわせるシルクスクリーン印刷と比べると効率的ではなく、価格もシルクスクリーン印刷よりも上がってしまいます。また生地の色によっては下地の影響をなくすためにデザインを印刷した後、生地側に白インクでベタ印刷する必要もあり、これも印刷代に影響してきます。どちらかというとワンポイント的な印刷向きと言えるでしょうか。
PP(ポリプロピレン)フィルムへのグラビア印刷とは
手提げ紙袋では主にコート紙の紙割れ防止の補強や色移り防止のために行われるPP加工。これはオフセット印刷した紙の上にツヤ有りやツヤ消しのPPフィルムを貼り付けるもので、PPフィルムに印刷するわけではありません。一方不織布製品に置けるPP加工は、ポリ袋と同様にグラビア印刷でPPフィルムにプリントし、それを不織布に貼り付けた原反シートを作ってから、加工・縫製して様々な袋を製作します。シルクスクリーン印刷や転写印刷と違って、一定量の原反シートを作る必要がありますので、小ロットでの製作はできませんが、フルカラー印刷はもちろん、袋全体に印刷できるのは大きな利点と言えます。表面にフィルムを貼るので不織布独特の凸凹のある生地は見えなくなりますが、グロス(ツヤ有り)とマット(ツヤ消し)のフィルムの選択でバッグの印象が大きく変わりますから、特徴的な不織布製品を製作することも可能です。また、フィルムを貼ることで補強にもなりますので、不織布のみの製品よりも比較的頑丈なものになります。
終わりに
ということで、第一回目のコラムは、「fukuroyasan.jp」尾崎紙工所が不織布製品に印刷する際に使用する、代表的な三つの印刷方法を紹介させていただきました。初の長文掲載で至らぬ点も多いとは思いますがいかがでしたでしょうか?
紹介させていただいた三つの印刷方法それぞれに一長一短があり、目的によって最適な印刷方法が違ってくることがお分かりいただけたなら幸いです。
上記で紹介した以外にも、最近ではオンデマンドでデジタル印刷が可能な印刷適性を持つ不織布や、こちらもフルカラー印刷が可能なタイベック生地など、技術の進歩とともに新しい不織布や印刷方法が次々と現れていますし、これからもどんどん便利な方向に進んでいくことでしょう。
ただ、技術が進歩して出来ることが増えても、最終的にそれを活かすのは機械や技術の側ではなく、人それぞれの創造性やアイデア、クリエイティビティです。ハイテクでも駄目なものはあるでしょうし、逆にローテクでも素晴らしいものは今この世の中にいくらでもあります。この時代、人間の創造性もいつかはAIに追い抜かれてしまうのかも知れませんが、それまではそれぞれ切磋琢磨して自らのセンスを磨き続けたいものだと思う編集子でした。
コメント
[…] 多くの他の既製品と同様に、オリジナル印刷はシルクスクリーン印刷にて行ないます。既に仕上がっている製品に印刷出来る数少ない印刷方法で、印刷エリアや面積等に制限がありますが、名入れ印刷には充分対応可能。こちらの記事でも詳しく解説しています。既製品の在庫があれば後は完成までは印刷するだけなので、納期イコール印刷する期間、と言うことになります。期間は印刷する数量で変わりますが、目安としては2週間前後、といった所です。もう少し細かい話をすると、この印刷期間には「印版を製作する期間+印刷する期間+印刷を乾燥させる期間」が含まれます。印版は数日で出来ますが、乾燥させる期間、というのは物によってはかなり変わってくる場合があります。ただ紙袋の場合は、多くは紙への直接印刷か、もしくはPPフィルム等への印刷となりますので乾燥には特に気を使わなくても大丈夫です。 […]